解体工事前によくあるトラブル
まずは、解体工事前によるあるトラブルからご紹介します。
■ 解体許可の無認可・損害賠償保険への未加入
解体を依頼する際には、解体業者の解体許可免許や許可証、登録番号などの有無と損害賠償保険への加入の有無をしっかりと確認しておきましょう。解体許可の認可を受けずに作業にあたる行為は違法であり、また損害賠償保険の未加入では工事中に起こる事故やトラブルに対応できないというリスクを背負うことになります。解体工事は、常に危険や事故リスクを伴っており、また隣家の破損や道路、植木への損傷など近隣とのトラブルが発生する可能性があります。その上、損害賠償保険が未加入であればトラブルがトラブルを招くことになりかねません。
■ 養生・足場の設置がずさん
解体工事前に発生するトラブルに、養生や足場のずさんな設置が挙げられます。養生は、近隣住民への騒音被害や粉じん飛散を抑えるために行います。養生が適切に設置されなければ、近隣への被害が広がり近隣住民とのトラブルになりかねません。また足場は、解体作業員の安全を確保し工事を順調に進めるために行います。足場の倒壊は、作業員の事故につながるだけではなく、隣家に損害を与えることさえあります。
■ 近隣住民への事前あいさつがない
解体工事は、騒音や振動、粉じんの飛散、作業車の路上駐車など近隣住民へ多かれ少なかれ迷惑をかけることになります。事前のあいさつを行わずに工事を始めてしまうと近隣住民にストレスを与え、大きなトラブルが起きる可能性もあります。近隣住民へのあいさつは、依頼主と解体業者が一緒に行くのが一般的で、工事に関する説明を行い、理解と協力を求めることが重要です。
解体工事中によくあるトラブル
解体業者選びから解体工事開始手続きまで、注意してトラブル回避に努めてきました。しかし、解体工事中はこれ以上にトラブルの発生確率も高く、より依頼主の注意と迅速な対応が必要になります。
■ 工事の遅延トラブル
解体工事の遅延理由として、台風や地震、豪雪などの自然災害が挙げられますが、業者によっては正当な理由なく勝手な都合で工事の開始が遅延されることがあります。依頼主に解体後の土地の再利用計画や売却予定がある場合、工事開始・終了が遅れることで損害が出る場合があります。契約前にしっかりと工期を守れる業者かどうか、適切な説明を受け確認をしておく必要があります。
■ 路上駐車トラブル
解体工事中は、作業トラックや重機、作業員の車などさまざまな車が工事現場を出入り・駐車することになります。普段から同じ道路を使う近隣住民に迷惑や不便をかけるため、多少のことでもトラブルに発展しやすくなります。道路事情をよく知る依頼主が近隣住民の声に耳を傾けて、解体業者と一緒に迷惑のかからない駐車スペースを事前に考えておく必要があります。
■ 騒音・振動トラブル
解体工事では、重機やトラックを使うことが多く、大きな騒音や振動を避けることができません。そのため、何の説明もなく突然解体工事を開始してしまうと近隣トラブルになり得ます。近隣住民への事前あいさつと、解体業者との作業時間確認をしておきましょう。
■ ほこり・粉じん飛散トラブル
解体工事中は、騒音や振動と同様にほこりや粉じんの飛散も避けられません。近隣への被害をできる限り抑えるために、解体業者には、養生シートや防塵シートを適切に設置してもらう必要があります。
■ 追加工事費用の請求トラブル
見積もりの段階では分かりにくい、地中に埋まっている障害物への工事費用として「地中障害物は別途計算」という項目が存在します。コンクリートブロックや浄化槽などがこれに当たります。しかし本来、依頼主の許可が必要な地中障害物の追加工事を解体業者が勝手に行い追加費用を請求したり、見積もりよりも大幅に廃棄物の量が増えたなどと言って追加費用を請求したりするケースがあります。
事前にこういったケースを想定して、契約書などで合意を交わしておくとよいでしょう。
解体工事後によくあるトラブル
解体工事が終わると一安心ですが、工事後に起こりうるよくあるトラブルも確認しておきましょう。
■ 整地作業がずさん
解体工事は、家屋や建物を取り壊しただけでは終わりません。解体した後の産業廃棄物の処理を行い、細かいゴミを清掃して、最終的に地面を平らに整える整地作業の完了まで求められます。土地が荒れた状態で工事を終了されてしまうと、二次利用ができなくなります。解体業者から工事終了の報告を受けた場合、必ず解体現場の整地状態を確認しましょう。
■ 不法投棄
解体工事で発生した産業廃棄物は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)に沿った流れで処分される必要があります。しかし、解体業者によっては、廃棄物処理法の手順を守らず山林や空き地に廃棄物を不法投棄することがあります。
■ 建物取り壊し証明書の未発行
「建物取り壊し証明書」とは、解体工事を請け負った業者が必要個所を記入し、発行するものです。建物減失登記に必ず必要な証明書ですので、解体業者への確認を忘れないようにしましょう。
解体工事トラブルを回避するポイント
解体工事で起こりうるさまざまにトラブルについて紹介してきました。ここからは、依頼主として解体工事トラブルを最大限防ぐためのポイントをご紹介しましょう。
■ 解体業者の許可証・登録や実績を重視
解体工事の契約前には、解体業者の会社の住所やホームページで実績を確認しておくことはもちろん、必ず解体工事の許可証や登録の提示を受けて信頼できる業者がどうかを確認しておきましょう。
・建設業許可:建設業法によって定められた28種類の業種のうち、土木工事業・建築工事業・とび・土工工事業のいずれかが必要
・解体工事業登録:建設リサイクル法で定められた都道府県知事の解体工事業登録
■ 見積もりを入念チェック・認識の違いをなくす
複数社から見積もりを取ることはもちろん、提示された金額が適正かどうかを注意して見る必要があります。見積もりが安くても内訳項目の不備があれば追加費用を請求され、結果的に高額になる場合があります。また、不法投棄や違法工事を行うために安い価格を提示する可能性もあります。信頼できる解体業者を見極めるためにも、追加費用の規定や費用が発生するケースの説明を詳しく受けておきましょう。念のため、書面での条件提示をお願いしておくとよいでしょう。
■ 近隣住民へのあいさつを大切に
近隣住民へのあいさつを軽視したことで、解体工事への理解や協力を得られずトラブルにつながることが多くあります。近隣住民への迷惑やストレスがかかることを考えて、事前にていねいな説明とあいさつを行うことが大切です。
■ マニフェストの提出を依頼
最後に大切な確認ポイントとして、マニフェストの提出依頼があります。解体工事で発生した産業廃棄物を「廃棄物処理法」に従った形式・手順で適正に処分されることが記された書類です。また、マニフェストには主に産業廃棄物の種類・数量・運搬業者名・処分業者名などが記されています。排出事業者が、各業者から処理終了を記載したマニフェストを受けることで委託内容通りに廃棄物が処理されてことが分かるようになっています。不法投棄や不適切な処分を防ぐためにも、事前に解体業者にマニフェストの提出を依頼しておきましょう。
解体工事トラブルの対処方法
解体工事でトラブルがあった場合、「法テラス」(国が設立した法律相談総合窓口)に相談して対処する方法があります。「法テラス」で問題を解決するのではなく、具体的にどこに相談すれば解決できそうか・法的に解決できる事案かどうかなどのアドバイスを受けることができます。
■ 弁護士に相談
解体工事トラブルの対応としては、専門の知識や法律に詳しいスキルを持った、建設業界に強い弁護士や実績のあるベテラン弁護士を調べて依頼するとよいでしょう。
■ 消費者センターに相談
弁護士に依頼をすると、弁護士費用が必要になります。しかし、消費者センターでは原則無料でトラブルや被害についての相談ができます。消費者センターで問題が解決できれば費用をかけずに済みます。もし、こちらで解決できない場合は弁護士を紹介してもらうという手順でよいでしょう。